4hei4heiのブログ

主に読書/視聴メモとか、やったことを書こうと思っています。

『羊の木』の視聴メモ

はじめに

以下、文中では敬称略。

『羊の木』を観たので、その視聴メモです。

https://www.netflix.com/search?q=%E7%BE%8A%E3%81%AE&jbv=81070893

松田龍平が好きなのでサムネイルで釣られたのと、あらすじをざっと眺めた限り「大失敗した人間たちの話」に思えて、好みに思ったので観ました。

実際、好きな部類の話でした。

 

あらすじなど

wikiより

過疎化の進む富山県魚深市で、地方都市に元受刑者を移住させるという国の極秘更生プロジェクトを行う。6人の元受刑者を順番に迎えに行く月末一(錦戸亮)は、彼らがどこか普通ではないことに気づく。

彼らが元殺人犯であることを聞かされた月末は魚深で暮らす彼らを見守っていくが、周囲では徐々に彼らの過去が明かされていく。

視聴後に検索して知ったのですが、漫画原作の作品でした。

いわゆる実写化作品です。

 

雑な感想

ストーリー

ストーリーの主軸になるのが6名の元殺人犯である都合上「元殺人犯とバレないだろうか」という危うさとか嫌なジメジメ感が漂い続けていました。ドキドキハラハラするものではなく、ただただ不安になる種類のものでした。6人の雰囲気もそれぞれどこか不安定に見えたり不気味さが醸し出されていて、見ていて危なっかしかったです。

舞台が華やかな都市部ではなく、寂れた田舎町であることに加えて画面も暗く、全体的に陰鬱な雰囲気の一助になっていたように思います。展開もさほど劇的なものではなく、(不気味ではありつつも)衝撃的なことが起こることなく終盤まで進んでいくので、どこかしら刺さるポイントがないと退屈に思えるかもしれないです。

ただ、不気味で不安になるだけの話かというとそうではなく、町に馴染もうとする元殺人犯たちに対して歩み寄りや理解を示す人たち(主人公の月末(錦戸亮)、理髪店の店主(中村有志)、クリーニング屋の店主(安藤玉恵)など)も登場しています。彼らとの間にわかりやすいぐらいの心暖まる描写もありましたが、陰鬱な雰囲気の中での清涼剤のような役割だったと思います。大きな失敗をした後に生きていくのは過酷な道と想像できますが、本人次第では再び誰かから受け入れら得るのだと思うと、希望を感じることができました。

 

キャスト

元殺人犯の6名はいずれも特徴的なキャラクターでしたが、印象的だったのは以下の面々でした。

杉山(北村一輝)の、常にヘラヘラした不遜な態度は「笑っているが突然殴ってくるんじゃないか」という不安を掻き立てられて、とても不気味で印象的でした。「そう思うのは彼が元殺人犯と知っているからなのだろうか」と考えながら観ていましたが、実際杉山は明確な悪意を持っているという点で印象通りの人間だったので、イメージと実態が一致していました。いい意味で意外性がなかったです。ストーリーを積極的に展開させるのも杉山でした。

福元(水澤紳吾)はいかにも要領が悪くで気弱で、常に何かに怯えている雰囲気が印象的でした。少しでも失敗や破滅が脳裏をチラつくと、ただでさえ少ない余裕を完全に失ってしまってパニックを起こす様子(実際に見たことがない人にとっては怯え過ぎに思えるぐらいの)は見ている側も不安になるのではないかと思いました。個人的な話ですが、気が小さくすぐに余裕を失う点など、共感できる点も多かったです。

栗本(市川実日子)はほとんど言葉を発さず、声も小さく、最もコミュニケーションに難がある様子でした。下を向いて、ベタ足で歩く様子などは「(本人からすれば大きなお世話ですが)一度社会から弾かれたことによる卑屈さからだろうか。それとも生来こういう気質なのだろうか」などと考える余地があり、見ていて楽しいキャラクターでした。道端で死んでいる小鳥などの動物を住居の隣に埋めて弔っていて「そもそも殺人を犯すような人ではない」という分かりやすいぐらいの描写もありました。

宮腰(松田龍平)については、一般的な感覚では理解できない人間性の持ち主という描写がされていたと思います。心理的なブレーキがないため、多くの人が虫を殺すように平然と殺人ができるキャラクターでした。一方で、月末たちと人間関係を構築しようとする面があったり、子供達と遊ぶ描写もあって「普通」っぽく振る舞おうとしていました。しかし、距離感がどこかズレていたり、社会性が欠如したりと、常に不気味さが付き纏うキャラクターでした。クライマックスの月末とのやりとりは正直理解できなかったですが、そもそも理解されるキャラクターではないので、わからないと感じる人の方が多いのではないかと勝手に思っています。

 

おわりに

視聴中は常にうっすらと不安を掻き立てられたので、人を選ぶ物語と思いました。

ただ、社会から弾かれてしまった人たちが恐怖や疎外感を抱えつつ、土地に馴染もうとする様子は心打たれるものがありました。