直近の視聴履歴 (22/05-22/06)
はじめに
例によって視聴履歴が溜まってきたので大して説明も書かない雑な感想です。今回は古い映画が多かったです。
人名は敬称略で、あらすじ周りも大体省略しています。
雑感想
『痴人の愛』
読みました。あらすじは広く知られていると思うので割愛。
秀でた美貌の少女を妻にするために育てる、という時点で本作のエンディングのように立場が逆転することは既定路線な気はしましたが、男性のどうしようもなさとか美しい外見への抗えなさを繰り返し独白していてとても好きでした。美形と並んで歩くときの優越感とか、「こんなにも美しい人が (自身のパートナー的な意味での) 自分のものなのだ」という思いが如何に根深く尾を引くものかが描写されていました。
本作のような種類の純文学は登場人物がどのように感じたかの事細かな描写が楽しめる点かと思います。
『シン・ウルトラマン』
個人的に初代ウルトラマンや同時期の特撮作品に対する知識は多くなく、幼少期に『ウルトラマン物語』を観たことがある程度です。ただ、ウルトラマンティガが好きな子供だったので、テイストは違えどウルトラマンという概念には多少の思い入れはあります。
苦手な点
ザラブ星人パートで、アサミ隊員が急に「バディであること」を強調する点には少し辟易しました、仲間意識や絆のような描写が来るには積み重ねが薄い気がしたので。また、ラストシーンは暖かさのようなものに振りすぎな気がして個人的には苦手でした。
好きな点
全編通して人間の愚かさや浅ましさを見せられてもなお人類に尽くすウルトラマンの姿から、ウルトラマンが人間に対して抱いた愛の物語なのだと感じました。予告や宣伝でのソーフィーの台詞からも読み取れる要素に思うので裏付けにもなる気がしています。
メフィラス星人は原作同様ウルトラマンと互角で格を落とさない描き方だったことやゼットンの扱いの巧みさは意表を突かれて純粋に驚きがあったので楽しめました。メフィラス構文のような面でも面白さもありました。
個人的な思い入れも手伝って満足度は高かったです。
『ある告発の解剖』
https://www.netflix.com/jp/title/81152788
主演のミシェル•ドッカリーの顔と声が好きなので釣られて観ました。
人気の若手政治家がレイプで訴えられた裁判を巡る物語。現代パートと過去パートで主要人物たちがどのような人物かを描きながら裁判の動向を追っていくのが大まかな構成です。
法廷シーン
裁判や法律の知識はないので正確なことは言えませんが、性被害の立証の難しさを描いている点やそれを踏まえた法律家たちの問答は本作のウリに思いました。自身が恵まれている点については鈍感で当たり前なものとして捉えていることの傲慢さもあり
公開処刑的な点
俗っぽい見方なのと、本作が重要視していそうな点からは脱線していますが、ストーリーは、ハンサムでオックスフォード卒で人望もあって美人の妻がいて大臣を務めていて実家も裕福で......という現代貴族の詰め合わせセットのような男性議員が吊し上げられる構図です。そのため、全6話かけて妻からの信頼を失っていく様や、裁判の経過や過去の行いを省みて精神をすり減らしている様が描かれる点はルサンチマンを刺激されて愉快さを感じました。
『パルファム』
https://www.netflix.com/jp/title/80200596
観ました。全6話の猟奇殺人ミステリで「特定の人の部位から取れる、人から愛される香り」というものが存在する設定だけファンタジー要素であとは現実ベースの設定。
終盤入り口ぐらいに先述の香りの存在が明かされ、そこで初めてあらゆることの辻褄が合い始める都合上、そこまでの展開は盛り上がりに欠けている印象でした。
設定の話
主要な登場人物たちはほぼ全員、恵まれていない環境 (育児放棄/虐待、虐め、性的暴行/中絶) で育っており、中盤に差し掛かるまでずっとなぜこのような設定なのか腑に落ちなかったのですが、これも先述の香りの存在で個人的には納得がいきました。
誰かから愛されたがるのは一般的な欲求と思いますが、特にそうした欲求が強い人達、という意味で先述のような環境で育った人たちが登場人物に多いのだと勝手に推測しています。 合っているかは分かりませんがそれっぽさがあるので納得をしています。
ラストシーン
事件は形式上解決されますが、人の愛情への渇望でこれからも殺人は続くことが仄めかされているラストシーンで、煮え切らない/後味の悪いものでした。多くの場合、精神的な渇望や歪みからくる欲求に人は勝てない、という表現で個人的には好きな締めでした。
『ショーシャンクの空に』
金曜ロードショーで放送されていたものを観ました。初見でした。
「どん底でも希望を捨てず、強い意志で何かを成し遂げる」というある種お手本のような物語とも言えますが、語り手のレッドがアンディという囚人や自身の環境をとてもよく観察している独白がとても好きでした。あまり感想らしい感想はなく、とても面白かったということしか上手く言語化できませんでした。
個人的にはジョジョ6部が本作品にインスパイアされているのだなということが察せられて、その点も楽しかったです。
『ヴァイキング ~海の覇者たち~』
全6シーズンを一年ぐらいかけて漸く観終えました。
ラグナルの話
S1~3ほどまではラグナルという強大なカリスマを中心に彼が野望や大志に向かって邁進する大河的な物語で、山あり谷ありとはいえテンポ良く進むサクセスストーリー的な楽しさがありました。ラグナルが先見的で魅力的な人物として描かれていることと、版図を広げたり統治に試行錯誤する様は順当に楽しめました。個人的にはラグナルとアセルスタンの宗教を超えた友愛の描写が好きだったのでどんどん視聴が進みました。登場キャラクターも多く、人間関係・政治闘争のような面でも楽しめました。
彼の死後
ラグナルの死後は同世代の人物たちも徐々に引退し、ラグナルの息子たちが中心となるストーリーに移り変わっていきますが、ここからは尻すぼみ感が否めなかったです。ここからラストまで、他勢力を巻き込んだ後継者争いの戦争を繰り返すような展開でストーリーが進みますが、息子たちの役不足感が否めなかったです。息子達は皆「ほとんどの能力スペックがラグナルの下位互換で、(数名だけ) 特定の能力のみラグナルより秀でている」であり、誰を見てもラグナルと比較して見劣りします。また、息子達だけでなく誰も彼もがラグナルという偉大な存在を無視できないような描写が随所で差し込まれていたため、人物も展開もラグナル存命時と比較して面白さが損なわれることが思い出されるという視聴体験でした。まあ、だから跡継ぎ争いや兄弟喧嘩が起こっていると思えば納得できるっちゃできるんですが。
個人的な点
個人的には息子の一人であるアイヴァーが好きだったりと、楽しめるポイントはありましたが、彼一人への好感でストーリーへの評価は覆らなかったので後半シーズンは少しイマイチな印象でした。
『タクシードライバー』
https://www.netflix.com/jp/title/18907685
有名なやつですね。兵隊上がりの陰鬱なタクシードライバー トラヴィスの話ですね。観ていて無敵の人感がありました。クライマックスの描写から、実際そうだったと思います。
意中の女性とのデートでポルノ映画に誘う、部屋の中で武装する、児童売春されている子を指名して説教をする、等なかなか限界な行動が多く見ていられなさがありました。若く美しいロバート デニーロの顔面でもダメでした。生来彼の感性が周りとずれているのか後天的なものか判断しかねましたが、とにかく辛そうでした。表現が難しいですが、諦めで乾いている印象でした。
重傷を負ったものの、最後は彼自身が何かに満足できたような終わりなのは救いがあっていいのではないかと思いました。
『ファイト•クラブ』
https://www.netflix.com/jp/title/26004747
これも古いですが有名なやつですね。タイラーは主人公が作り出したもう一つの人格だった話です。個人的にはとても面白かったです、好きです。
主人公の生きづらさは不眠症起因ですが、潜在的には色々抑圧していたんじゃないかと思いました。特に根拠はないですが、ファイトクラブなんてものを作るのだから、発散したい強い何かがあったと思う方が自然な気がします。特に根拠はないです。
面白くて特に文句がなかったので感想も然程ないです。
『Catch Me If You Can』
https://www.netflix.com/jp/title/60024942
これもまた有名なやつですね。
「人間は10代で手に入らなかったものに生涯執着する」と言われることもありますが、試聴中にその主張が浮かびました。主人公フランクの場合、厳密には手に入らなかったものではなく失ったものですが。逮捕直前になっても両親への想いが強いフランクの描写は哀れさがありました。それが彼の愛らしさでもあると思いますが、ある面だけ子供のまま大人になった感じがとても伝わる演技だと思いました。レオ様さすがという感じ。
個人的には、中盤の結婚直前のタイミングで、恋人の家庭 (とても円満な素晴らしい家庭) に自分の居場所を見出せていない描写がとても哀れで好きなシーンです。「どこの誰と出逢ってもきっと彼はこうなるのではないか」となって、観ているこちらがやや絶望しました。後半の感想は僕の妄想ですが。
『東京物語』
https://www.netflix.com/jp/title/60031727
どこで知ったか忘れましたが、マイリストに入れっぱなしだったのを観ました。
「子供たちのなんと薄情なことか」「血の繋がっていない、未亡人となった義理の娘 が最も優しく思いやりがあった。血のつながりとは」というのが描写の主旨だとは思いました。未亡人の義理の娘役が原節子 (美人) なので、登場人物の誰を善く見せたいのか分かりやすかったです。
薄情な子供達の描写の話
ただ、現代人的価値観 (というか個人的な思い) で観たかぎり「田舎からわざわざ出てこられても、こちらにも生活がある。しかし追い返すわけにもいかないし、ずっと家にいられるのも困る」という背景の両親たらい回しに見えるので、納得感を持って観られたというのが正直なところでした。
子供たち (といっても家庭を持った中年達) が陰で本音を漏らしている描写を見ればそれは悪い印象を抱きはしますが、そう言われるのもやむなしではと思えます。母親が死んだ後の描写は流石に思うところがありましたが、全体を通して子供たちの親へ対する感情は順当なものに思えました (現代と比べて親族間のつながりが深い時代とは思いますので、それに照らせば冷たい、というのは納得です)。
『細雪(1983年版)』
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資産があって社会的な名声のある家の人たちを現代貴族とか呼びますが、昭和初頭ぐらいの現代貴族 (没落中) な家に生まれた4姉妹の話ですね。時代設定は明確でなかった気がしますが、満州へ行く/行かないとか言ってたのでその辺りの時代ですね。ひょっとしたら原作には記載があるのかもしれない。
ざっくり所感
家裁の取り仕切り的な意思決定層の長女と次女、縁談やら駆け落ちで若者感の強い三女と四女、で物の見方のレイヤが違うように見えたので悩みやトラブルも二分されてた気がします。あちらこちらからの板挟みに苦しみつつ調整や家裁に奔走する長女や次女に同情的な目線で観ていました。思春期とかに観ると自由な三女や四女の印象が良かった気がするので、観る人の年齢層で印象は変わりそうな気がします。
三女の話
印象的だったのは三女 (吉永小百合) でした。活字で読めば描写から読み取れるのかもしれませんが、ほとんど主張しないので何を考えているのかわからない不気味さがありました。では主張をせず流されているだけかというとそうではなく、屋敷を売る/売らないの話には激しく反対していたり、縁談相手へのお断りの意思は強めだったりするので「単に口数が少ない我儘な人」という安直な印象に落とし込んでしまいました。一番箱入りお嬢様感のある人物でした。
『シン ゴジラ』
https://www.netflix.com/jp/title/80117457
足の引っ張り合いがなくストレスなく視聴できる、みたいな前評判を聞いた状態で試聴しました。実際その通りだったように思います。
ゴジラ以外の超常現象/超能力要素はなかった (ように見える) です。そういった比較的現実的な描写多めの中で、前向きで熱い「日本はまだまだやれる」みたいなメッセージとか、登場人物達の自負感の強さはちょっと苦手な類の描写でしたが、元々優秀な人たちが国の存亡に携われば、あるいはゴジラが出ればそりゃそんなことも思うか、という感じです。
リピートしている人の話を聞いたこともありますが、納得でした。
『ダンケルク』
https://www.netflix.com/jp/title/80170278
公開当時に観たので2度目の試聴です。
陸海空の時間スケールの違う3軸が最終的に収束していく作りは個人的にとても好きです。ただ、一方で特に盛り上がる見所がない話とは思います。強いて言うならラストのスピットファイア。
天才とか強烈な花形のいない中で、凡人達がそれぞれ倫理観と現実との葛藤、責任意識と戦いの末、尊敬できる振る舞いをするような描写が楽しめるのであれば、良い試聴体験になりそうな気がします。
アメリ
https://www.netflix.com/jp/title/60022048
パッケージだけ知ってた状態で観ました。家庭の事情もあって友達のいない幼少期を過ごした女性の話ですね。「生い立ちが原因」といえば全て片付く気もしますが、個人的には想像していたより邪悪な人物に思いました。
あらすじに「周りの人々を幸せにする喜びを見出した」とありましたが、他人としっかりコミュニケーションを取れないので「私の考えるこの人の幸せ」を実現させることに強いエネルギーを費やしていた印象です。作中、任意の男女に嘘を吹き込んで互いに意識させて恋人にしようとする試みがありましたが、個人的には「他人をなんだと思っているのか」と感じたので邪悪でした。
最終的に結ばれるニノに対してもそうですが、アメリは善意や素で他人を自分の思う通りにしようとする行動が多いように思ったので邪悪でした。不快感が勝ったのであまり好きではなかったです。